2012年7月26日木曜日

版画と漫画とデザインと

以前より漫画の技法をプロダクトに活かせないかと考えていました。

モノが自分の意図通り作れないことが悩みでした。
それがたとえ自分の手で作るものであっても、
工程が複雑になる程、最初のイメージと完成品にギャップが生じるのでした。

漫画のキャラクターは手早く描けるようにデザインされています。
子供も真似して描けるし、それがなんだかわかるのがすごい。

これをプロダクトデザインに置き換えると、
ぱっと見がフレンドリーで、眺めているだけで愛着のわく
誰かが手を加えても壊れたりせず、
ちょっとの仕様変更や成形不具合にも耐えうる
そういう強いデザインになるんじゃないかと思います。

それがどうやったら上手く実現できるのか
日々試行錯誤しながらデザインの仕事に取り組んでいます。


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漫画と版画はよく似ています。
なぜGペンなどという難しい筆記具で描くのでしょうか。
ひとつの理由は変換に耐えるためです。
鉛筆デッサンをスキャンしたり写真に残したことのある人はよくわかると思います。

画用紙の上できらめく炭素の光は、jpegになるとその輝きを失います。
鉛筆のグレーを、Gペンで白と黒に分解することで、スキャンしてもコピーしても劣化しない絵にする作業。
これが漫画絵の基本だと僕は思っています。
版画はGペンでなく、木や金属の板に凸凹をつけることで黒と白をつくります。

要するに漫画も版画もボカシが効かないのでしょう。
すべての漫画や版画がそうとは言いませんが、僕はそういう白黒ハッキリした作品が好きです。
記号と記号の組み合わせで構成された画面はさまざまな言葉を含みつつ、力強く、見ていて面白い。

そういう家電てあるかなとずっと意識してはいるのですが、どうもピンときません。
イサムノグチの彫刻とか、便器とか、フェンダーのギターなんかだいぶ近いです。
なんでしょうね、線の太いデザインがしたい。







立体物と線。

版画はよく見ると立体でした。写真では分からないかもしれませんが、
黒いところが出っ張って、白いところは引っ込んでいます。
つまり銅版の溝に当たる部分は溝の形に添って、紙が盛り上がって残るのです。
出っ張った黒い線が光を反射し輝きます。これが美しい。

プロダクトデザイン、例えば一眼レフのカメラを見るとします。
3次元的に線が走り回っています。
太くなったり、カーブを描いて消えたり、
線が走り回っているというよりは、光が、というほうが正しいかもしれません。
とにかくきれいなデザインは線の走り方がうつくしい。

普段キャド上でデザインしていると忘れてしまいがちですが、光はうつくしいです。
光のかたちがつまりそのデザインのかたちであって、デザインの個性をしゃべります。

しかしおそろしいことに、こういうことは考えなくてもデザインが作れてしまいます。
むしろキャド上で光を作りこむ作業って難しい。
こういうことを考えないでデザインされたものはやっぱり光り方がきたないです。
ああなんか胃が痛くなってきますね。
しっかりしないと。




ちなみに版画を裏返すと銅版の厚み分、
紙が出っ張っています。これすらもきれい。
なんか版画ほんときれい。




線のムード。

線を少なくすると、線それ自体の表情がうかんできます。
線の表情はそれだけで記号になります。
うれしいとかたのしいとか言わなくても
ムードが心に沁みこんできます。

女子高生の口はぐにゃっと曲がっていますが
この歪みは銅版の硬さであり、軟らかさであり、
僕の手が女子高生の口をなぞるちょっとした緊張感と、
若い子はニコニコしていてほしいという願いです。

形状は意図通りではありませんが、
ムードは狙った通りばっちりなのです。
形の歪みは問題ではなく、
デザイナーが作るべきは、ムードの方だと思いました。

プロダクトデザインの図面を描くとき、基準にしてほしい線と、
それに追随する線、それぞれありますが、
だいたい基準の線は中身の部品の配置で決まっていきます。
けれど、ムードを作る線、それをデザイナーが作って、守っていく
そういう必要性を感じています。





諧調を分けて抑揚をつけること。

太い線は太い線のレベルに揃える。
細い線は細い線のレベルに揃える。
色面をつくると質感があらわれる。
一箇所に質感があらわれると、それまでただの白だった部分にも
質感があるように感じます。

線のリズム、質感のリズム、画面の中でのバランス、プロポーションを、
コントロールするのがデザイナーの仕事です。
気取らずキャッチーに。ポップソングのように。

質感の使い分けはプロダクトデザインですごく効果を発揮します。
プロダクトデザインはさわることができるデザインですから、
触覚がとてもだいじです。

これもまたキャド上ではさわれません。作りましょうモデルを。
この部分に触るときは、どんな質感が心地よいか。
試しましょう。そして質面と質面の境界をつくりましょう。
そこにまた線が生まれて、デザインがしゃべりだします。

あーもう全然できていません。
なんなんですか今夜は自虐祭りですか。





文字難しかったです。

線は記号です。記号で記号を表現するのは難しい。
意味が2重3重に重なってしまうためです。
記号を使って構成するときは、表現を極力フラットに。
狙ってやるには相当の訓練がいります。

ただ、やっぱり文字の力はすごい。
この文字がなかったらなぜJKかなんてわかんないと思います。




金属を彫ることについて。

プラスチックの製品を量産するためには、
金型といって、金属の型を作ります。
金属を金属で削って、みがいて、
そこにブシュッと溶けたプラスチックを吹き込んで成型します。

最近はPCで作った3Dデータをドリルに送信してある程度機械が削ってくれはするのですが
結局、最終的には人の手で削るわけです。
当然作りにくい形もあります。

要するに細かくてカーブの多い造形を金属の型に作るのは間違いなく地獄です、
僕なら切れて型ぶち壊すでしょうね。


反対に、金属だからこそ美しく映える線みたいなのがきっとあるはずです。
線を選んで選んで、必要な点と線だけが生き残るような。
やっぱりそういうふうにするのが
きっといい!たぶん!







はあなんかいろいろ書きました。
後半疲れた。

うーん。絵かこう。







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