2012年3月12日月曜日

青Bの造形とガジェットデザイン(上)

この春晴れて多摩美プロダクトの院を卒業しデザイナーになるぼくらの青B、修了制作では自転車をデザインした。造形概念を骨、肉、皮3層に、構造的に分解したそうだ。
青Bの造形感覚がとても好きだ。石膏デッサンを愛し生体の構造に興味がある点で趣味が合うんだろう。造形の抑揚にあらわれている。
意外にも彼の使う言葉が心に響いた。造形と一緒に言葉遣いもシンプリフィケイトされていた。青Bやるゥ!


特に下記の部分がぐさりときた。(プロダクト卒カタ2012より抜粋)


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「抽象表現とデザインの共通点は、要素の圧縮である。」
抽象化するに際して単純化された形は、造形要素をただ単に削ってつくった訳ではなく、むしろつくり手の意図/情報を込め、削りと融合によってそれらを形に込めようとしていた結果であることが、作家の言葉からも読み取れた。


抽象表現
要素を捨てること、取り去ることではない。複数の要素を融合し、一つの形に圧縮すること。


デザイン
デザインは、シンプルであることが求められる。シンプルもまた複数の要素が圧縮された魅力。


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青Bの宣言通り彼の造形体は、それ自体複雑な構造ながらシンプルだ。恐竜博の魅力に近い。彼はそれをかたちで示した。工業製品と身体のかかわりについて日々思うが彼の言葉は重大な指針になる。
青Bの言葉と造形については下記日程で展示されるので興味のある方は覗いてみては。添付の画像は制作途中のもの、最終はわけあって実はわたしも見ていない。

2011年度多摩美術大学美術学部卒業制作展・大学院修了制作展

3月20日│火│〜3月23日│金│
10:00〜18:00(最終日15:00まで)


多摩美術大学八王子キャンパス
東京都八王子市鑓水2-1723
電話│042-676-8611(代表)
交通│JR・京王相模原線橋本駅北口ロータリー6番バス乗り場より神奈川中央交通バス「多摩美術大学行」(運賃170円)で8分、JR八王子駅南口ロータリー5番バス乗り場より京王バス「多摩美術大学行」(運賃200円)で20分

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さて
最近デザインをシンプルにしていく作業に疑念を抱いていた。
ひょっとして、デザイナーが手を加えないほうがよいものができるのではないかと思うのだ。それは自分の経験不足のせいか、デザインをつめていくと必ず「量産」の知識不足が障害になる。エンジニアがデザインの権限も持てば、現場の状況に応じてデザインをよりよく改善することが出来るに違いない。
しかし現状は違う。このやりとりに齟齬が生じデザインが濁る。


障害は企画段階にもある。
つねにクライアントの要望は「シンプルで格好良いデザイン」。しかし結果的に生まれてくるもの、選ばれるものはいつも「売れるためにシンプル化されたデザイン」。
デザイン価値を高めるためのシンプリフィケイションと売るためのシンプリフィケイションの違いを顕在化する必要がある。
デザイン価値を高めるためのシンプリフィケイションはまさに青Bの示した造形の豊かさだ。
売るためのシンプリフィケイションはお菓子のパッケージデザインに似ている。速く安く沢山作ること、マーケットで目立つこと、製品の特徴となる部分を特徴づけること。
お菓子のパッケージは基本的に消費された瞬間使命を果たしたことになる。しかしプロダクトデザインはちがう。5年、10年、いやもっと長く使えるものをつくりたい。


では今自分がすべきことはなにか。答えは既に半分出ている。情報共有だ。現場に行くことだ。特に製品に携わる開発、営業チームの見ているもの、考えていることを知ることだ。彼らは彼らの言語をもち、デザイナーの言葉ははっきり言ってほとんど通じていない。自分を知ってもらうのは当然必要だし、世代も経験値も大きく異なる他人の、言葉の裏を得るにはそれしかない。


のこり半分はオーディオ/音響機器・機材デザイン価値観の深層へ潜る必要があるようだ。


続く



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